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研究概要

大気中に存在する主要エアロゾルの地球規模での分布の再現・予測が可能な数値モデルSPRINTARSの開発

PM2.5や黄砂をはじめとする大気中の浮遊粒子状物質(エアロゾル)には、砂漠からの土壌粒子や海面からの海塩粒子といった自然起源のほかに、化石燃料や焼き畑起源の硫酸塩・黒色炭素・有機物といった人為起源のものがあります。これらの地球規模の分布をコンピュータにより再現・予測する数値モデルSPRINTARSを開発しています。

SPRINTARS


SPRINTARSを使用したエアロゾルによる気候変動の評価

エアロゾルは、太陽放射と地球放射を散乱したり吸収したりする効果(エアロゾル・放射相互作用)と、雲の凝結核や氷晶核の役割を通して雲微物理特性を変化させる効果(エアロゾル・雲相互作用)などにより、気候変動を引き起こします。SPRINTARSが組み込まれた気候モデルおよび地球システムモデルの改良や、それらを使用した研究を通して、エアロゾルによる気候変動の評価を進めています。エアロゾルは、二酸化炭素の次に大きな気候変動を引き起こすと推定されているものの、そのメカニズムが複雑であるため、研究の積み重ねが必要です。

SPRINTARS

SPRINTARSによって計算された人間活動起源の硫酸塩エアロゾルがすべて除去された場合の地上気温変化予測 (Takemura 2020)


SPRINTARSを利用したエアロゾル週間予測システムの開発

PM2.5や黄砂などによる大気環境の悪化は、社会的な問題です。SPRINTARSを活用して、エアロゾル週間予測 を毎日運用しています。また、予測精度の向上を目指した研究を進めています。SPRINTARSによるPM2.5の予測情報は、テレビ・ラジオ・新聞等で使用され、多くの人々の日常生活に活用されています。国内の報道機関の多くのPM2.5予測情報(4段階表示「非常に多い」「多い」「やや多い」「少ない」や飛来予測図)は、本研究室が提供した情報を使用しています。

以上の研究内容や研究領域のより詳しい基礎知識については、竹村教授による以下の資料が参考となります。

人工衛星観測の大気微量成分および雲データの解析を介した物質輸送過程の研究

熱帯対流圏界面遷移層(Tropical Tropopause Layer (TTL); 高度14~19km)は、対流圏から成層圏への物質の主要な入口として知られています。オゾン層破壊物質等の流入量の制御など、そこでの力学・放射等の過程が気候に大きな影響を与えていることが知られていますが、その詳細な過程は明らかにされていません。衛星観測による微量気体成分や雲のデータを用いて、特にTTL内の成層圏・対流圏間の力学的結合過程に関する研究を行っています。

温室効果ガス観測技術衛星を用いた温室効果ガスおよび雲の導出手法の高精度化に関する研究

温室効果ガス観測を主目的とした世界で初の人工衛星であるGOSAT(Greenhouse gases Observing SATellite)のスペクトルデータを用いて、氷雲情報の導出手法の開発および氷雲データセットの作成、また得られた雲情報を用いた二酸化炭素・メタン等の微量気体成分の導出手法の高精度化の研究を行っています。

主要研究プロジェクト

現在進めている主な研究プロジェクトは以下の通りです。

環境研究総合推進費(戦略的研究開発(I))(2021〜2025年度)
「短寿命気候強制因子による気候変動・環境影響に対応する緩和策推進のための研究」
【プロジェクトリーダー:竹村俊彦】


科学研究費補助金(基盤研究S)(2019~2023年度)
「階層的数値モデル群による短寿命気候強制因子の組成別・地域別定量的気候影響評価」【研究代表者:竹村俊彦】


AeroCom (Aerosol Model Intercomparison Project)


CACTI (Composition Air Quality Climate Interactions Initiative)


AerChemMIP (Aerosols and Chemistry Model Intercomparison Project)


科学研究費補助金(基盤研究B)(2021~2024年度)
「成層圏力学場が熱帯低気圧の発生・発達過程に与える影響」【研究代表者:江口菜穂】


千葉大学環境リモートセンシング研究センター共同利用研究(2014年度〜)
「衛星データを利用した対流圏・成層圏の物質輸送過程に関する研究」【研究代表者:江口菜穂】


その他にも様々な研究プロジェクトに携わっています。

過去に実施した主要研究プロジェクト

  • 環境研究総合推進費(課題調査型研究)(2020年度)「短寿命気候強制因子による気候変動・環境影響に対応する適応・緩和策推進のための調査研究」【研究代表者:竹村俊彦】
  • 科学研究費補助金(基盤研究A)(2015~2018年度)「エアロゾル地上リモートセンシング観測網による数値モデルの気候変動予測の高度化」【研究代表者:竹村俊彦】
  • 環境研究総合推進費(戦略的研究開発領域)(2014~2018年度)「SLCPの環境影響評価と削減パスの探索による気候変動対策の推進ー数値モデルによる気候・環境変動評価と影響評価」【研究代表者:竹村俊彦】
  • 科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究)(2015~2016年度)「気候モデルに適用する新しい雲・降水成長スキームの開発」【研究代表者:竹村俊彦】
  • 宇宙航空研究開発機構・気象庁気象研究所・九州大学応用力学研究所・国立環境研究所 4者共同研究(2014〜2016年度)「エアロゾルモニタリングシステム開発に関する研究」
  • 最先端・次世代研究開発支援プログラム(2010~2013年度)「数値モデルによる大気エアロゾルの環境負荷に関する評価および予測の高精度化」【研究代表者:竹村俊彦】
  • 科学研究費補助金(若手研究A)(2009~2010年度)「数値モデルを用いた大気エアロゾルの気候に対する影響の予測」【研究代表者:竹村俊彦】
  • 地球環境研究総合推進費(地球環境研究革新型)(2009~2010年度)「4次元データ同化手法を用いた全球エアロゾルモデルによる気候影響評価」【研究代表者:竹村俊彦】
  • 科学研究費補助金(若手研究A)(2006~2008年度)「大気エアロゾル予報モデルの開発」【研究代表者:竹村俊彦】
  • 科学研究費補助金(若手研究B)(2003~2004年度)「全球エアロゾル輸送・放射モデルを用いたエアロゾルの気象場に対する影響に関する研究 」【研究代表者:竹村俊彦】
  • 科学技術振興調整費(若手任期付研究員支援)(2002~2006年度)「気象モデルによるエアロゾルの気候影響研究」【研究代表者:竹村俊彦】
  • 科学研究費補助金(基盤研究C)(2013〜2016年度)「成層圏南北循環を介した成層圏‐対流圏結合過程の解明」【研究代表者:江口菜穂】
  • 科学研究費補助金(若手研究B)(2011〜2012年度)「熱帯域における成層圏-対流圏間の力学的結合過程の解明」【研究代表者:江口菜穂】
  • 科学研究費補助金(若手研究B)(2008〜2009年度)「成層圏突然昇温現象が熱帯対流圏に及ぼす影響」【研究代表者:江口菜穂】
  • NASA/GSFC GEST/UMBC Visiting Fellowship(2008年度)「Comparison study of carbon dioxide simulated by NIES transport model and GEOS-5」【研究代表者:江口菜穂】
  • 科学研究費補助金(若手研究B)(2005〜2007年度)「上部対流圏から下部成層圏における水蒸気分布の変動要因の解明と気候への影響評価」【研究代表者:江口菜穂】
  • 独立行政法人国立環境研究所奨励研究費(2005〜2006年度)「ラジオゾンデ・ゴム気球搭載用の湿度計を用いた上部対流圏の水蒸気観測」【研究代表者:江口菜穂】
  • 環境研究総合推進費(革新型研究開発)(2020~2021年度)「地球温暖化予測のための時空間シームレスな降雨・降雪スキームの開発」【研究代表者:道端拓朗】
  • 科学研究費補助金(若手研究)(2019~2022年度)「数値モデルに適用する雲氷・降雪粒子の新スキーム開発による気候予測の高精度化」【研究代表者:道端拓朗】
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