西南支部ニュースレター(19号)

                                            平成10年6月30日


<内  容>

1.平成9年度支部総会報告
2.平成9年度支部例会報告
3.支部ホームページの開設のお知らせ
4.平成10年度支部例会講演募集のお知らせ
5.支部会員名簿について


1.平成9年度支部総会報告

 1)開催場所
   水産大学校 国際交流会館2F

 2)開催日時
   12月12日(金)支部例会の午前の部の終了後

 3)総会(例会)出席者(順不同)
   広瀬直毅、野上真子、大崎章太郎、岳川さおり、黒田一紀、郭新宇、山城徹、
   中村啓彦、中野俊也、住吉真紀、神柱武志、鈴木和則、磯辺篤彦、万田敦昌、
   町中紀之、増田貴仁、市川敏弘、内田肇、毛利雅彦、加藤常徳、千手智晴、
   中村武史、伊藤靖子、藤澤理子、山野孝武、横田源弘、平田貴文、松野健、
   茶圓正明、清本容子、渡辺達郎、西迫宗大、滝川哲太郎、小賀百樹、井上博敬、
   白石昇司、田中宏明、石田雄三、村上正忠、中村啓美、長谷英昭、永野善太郎、
   岡村和麿、渡辺俊輝、長田宏、山田克也、高槻靖、吉川裕、上野俊士郎、
   山野有史、市川洋

 4)平成10年度事業計画
   事務局から下記のシンポジウムを開催することが提案され、承認された。
      開催場所 長崎市
      開催日   西日本海洋調査技術連絡会議の翌日(12月上旬)
      世話役   松野健 会員

 5)支部ホームページの開設について
   事務局から、支部ホームページを開設し、その管理を磯辺篤彦会員に依頼すること
  が提案され、了承された。

 6)報告
   配布資料に基づいて、平成9年度事業報告および会計報告が事務局より行われた。

 付記:下記の例会参加者から賛助金(各1口、千円)を戴いた。
   黒田一紀、郭新宇、山城徹、中村啓彦、中野俊也、鈴木和則、磯辺篤彦、
   市川敏弘、千手智晴、松野健、茶圓正明、清本容子、渡辺達郎、小賀百樹、
   井上博敬、中村啓美、岡村和麿、渡辺俊輝、上野俊士郎、市川洋


配布資料:

平成9年度日本海洋学会西南支部総会

日時:12月12日(金) 12:00〜13:00

場所:水産大学校 国際交流会館(2階)

1.支部長挨拶

2.議 題
 1)平成10年度事業計画
 2)支部ホームページの開設について
 3)その他

3.報 告
   1)平成9年度事業報告
    ●ニュースレター17号(5月)、18号(11月)の発行
    ●西日本海洋調査連絡会で「西日本地区・水産大学校の平成9年度海洋調査状況
     と平成10年度計画」を報告
    ●海洋気象学会・日本海洋学会西南支部合同シンポジウムの開催(12月12日)
     「東シナ海と日本海−最新の知見と今後の調査研究への提言−」
     コンビーナ:磯辺 篤彦(九州大学院総理工)、千手 智晴(水産大学校)
   2)会計報告
 ●収 入       24,190円
      前年度繰越金     190円
        賛助金(平成8年12月12日)  24,000円
 ●支 出            20,490円
      ニュースレター17号  11,180円
      ニュースレター18号   9,310円
 ●次年度繰越金                 3,510円

   3)会員異動
      会員数は160名である。ニュースレターを地区内外の支部会員および西日
     本海洋調査技術連絡会に加入している16機関の担当者に配布している。

   4)その他


2.平成9年度支部例会報告
  支部例会として、東シナ海と日本海における最新の知見を紹介し、その結果を踏まえて今後の海洋調査のあり方を議論する海洋気象学会・日本海洋学会西南支部合同シンポジウム「東シナ海と日本海−最新の知見と今後の調査研究への提言」が、1997年12月12日に水産大学校(下関市)で開催された。以下に本シンポジウムの内容を報告する。

プログラム
1. 九州南方海域における黒潮変動について
                                       山城徹(鹿児島大工)

2. 琉球列島東方の黒潮反流域における暖水渦の挙動
                                小賀百樹・安倍浩史(琉球大理)

3. 東シナ海における粒子輸送〜海底高濁度層の果たす役割(その分布と形成要因)
                                      岡村和麿(西海区水研)

4. 東シナ海における懸濁物分布の季節変動傾向
                                      清本容子(西海区水研)

5. 東シナ海における化学成分
                     木村完・清水隆郎・○井上博敬(長崎海洋気象台)

6. Ecological modeling in the East China Sea
                          郭新宇(東大海洋研)・柳哲雄(九大応力研)

7. 東シナ海と日本海におけるクロロフィル鉛直分布パターンの特徴
                                        長田宏(西海区水研)

8. 対馬海峡沿岸における暖海性大型動物プランクトンの大量出現について
                                        上野俊士郎(水大校)

9. 冬季の西部山陰沿岸における表層水温変動と定置網漁獲量
                       千手智晴(水大校)・渡邊俊輝(山口県外海水試)

10. 対馬暖流日本海沿岸分枝の流動構造
                        長谷英昭(九大総理工)・尹 宗煥(九大応力研)

11. 冬季日本海大和海盆付近の海洋構造
                          ○山田東也・平井光行・渡邊達郎(日水研)

12. 日本海固有水形成に関する数値実験
                   ○吉川 裕、秋友 和典、淡路 敏之(京大理学研究科)

13. 日本海海洋循環の数値シミュレーション
                        広瀬直毅(九大総理工)・尹 宗煥(九大応力研)

14.総合討論

概  要
 山城氏はKPI(Kuroshio Position Index)から求めたトカラ海峡での黒潮流軸位置の変化に対応して、沖永良部島北西沖からトカラ海峡にかけての黒潮流路が直進・蛇行の違った形状をとることを示した。また小賀・安部氏は、XBT観測結果およびT/P衛星による海面高度計データなどを用いて、沖縄東方で数ヶ月程度の時間スケールで頻繁に出現する、中規模暖水渦の空間構造や時間変動について紹介した。

 続いて岡村氏は東シナ海の陸棚縁辺部における19951996年5月と1997年7月の観測結果を用いて、粒子輸送に重要な役割を果たすといわれている海底高濁度層の時空間分布を紹介し、高濁度層を形成する粒子の起源について議論を進めた。また清本氏はADEOSで得られた水色画像を用いて懸濁物の分布パターンの把握を試み、冬季及び春季の中国沿岸域で鉱物粒子に由来すると考えられる可視バンドの反射輝度が極めて強い水塊が継続的に観察される事を示した。木村・清水・井上氏はPN線での25年間の観測データを用い、栄養塩、溶存酸素分布の平均像や季節・経年変動について述べた。続いてGuoYanagi氏は黄海・東シナ海で両氏が行ってきた数値生態系モデリングの結果を紹介し、同海域での栄養塩のソースとして大陸から供給されるものよりも、むしろ黒潮中深層から陸棚斜面を這い上がって供給されるものが重要である事を示した。

 長田氏はクロロフィルの鉛直分布特性(特に亜表層クロロフィル極大)を日本海・東シナ海で比較し、それらと両海域に特有な海洋構造を関連付けようと試みた。上野氏は山陰海岸で精査した動物プランクトンの漂着状況について紹介した。続く質疑応答の中で、沖合いにあるTS分布のパッチ構造と、大量に海岸に打ち上げられる動物プランクトンとの関係について議論が進められた。千手・渡邊氏は、西部山陰沿岸に設置した水温計の記録より、山陰沿岸を西に伝播する20日程度の周期を持つ変動と、卓越周期を徐々に短くしながらやはり西に伝播する310日程度の変動が見られることを示した。

 日本沿岸を流れるいわゆる対馬暖流沿岸分枝は、地衡流計算によって検出する事は難しいが、長谷・尹両氏はその空間構造を明らかにするべくADCP観測を繰り返し実施した。その結果、能登半島西部海域で沿岸分枝はさらに2つの強流帯に分かれること、水深200300mの中層に南西向きの潜流が観測できることなど興味深い成果をあげた。続いて山田・平井・渡邊氏によって、観測データが少ない冬季の対馬暖流域で集中して行ったCTDXBTXCTD観測成果について報告があった。

 最後の2題は日本海における数値モデリングの成果で、吉川・秋友・淡路氏はウラジオストック沖日本海固有水形成域での"深い対流"を、モデルで再現してみせた。彼らによれば、ドーム状になったような水平非一様な密度構造をa prioriに与えた場合は、海面冷却、傾圧不安定の成長促進、それに伴う組織的な下降流の発達といった対流・傾圧不安定の相乗作用が中深層水形成に重要な役割を果たす。続いて広瀬・尹氏は、彼らが開発した数値モデル、RIAMOMを用いた日本海の循環のシミュレーション結果について紹介した。彼らのモデルは、従来のモデルの欠点であった東韓暖流のovershootingや、暖かすぎる深層水(この場合は日本海固有水)といった問題も克服しており、今後の精度の高い同化モデルの開発に道を拓くものである。

 一連の発表の後に行われた総合討論では、上述のような最新の知見を踏まえた上で、今後あるべき調査体制についていくつかの提案がなされた。たとえばGuoYanagi氏が発表したような数値生態系モデルを、日本海や東シナ海でより精度よく実施するためには、まずこれらの海域で、物理量に比べ圧倒的に少ない化学・生物データを蓄積し、それらの気候分布を明らかにする方向性で、現業としての観測を行うべきではないか、また、それぞれの機関がそれぞれの担当海域ごとに側線を決めるのではなく、データの有効利用(特に同化モデルでの利用)を勘案して、たとえばT/P観測線に沿ったラインで今後データを蓄積していくべきではないか、さらには、特定の物理過程を解き明かすためのキーとなる海域に観測を集中させる調査のあり方も今後検討されるべきではないか、との意見が出された。
                               (コンビ−ナ−:磯辺篤彦・千手智晴)


3.支部ホームページの開設のお知らせ
  平成9年度支部総会での決定に基づき、磯辺篤彦会員のご尽力により以下のURLに本支部のホームページが開設されましたのでお知らせします。

      http://kaimen3.esst.kyushu-u.ac.jp/swb.html

このホームページの充実のために、会員の皆様の情報提供を是非お願いします。



4.平成10年度支部例会開催のお知らせ
 平成10年度支部例会として、海洋気象学会、水産海洋学会と共催して、以下のような趣旨に基づき、

九州沖縄地区合同シンポジウム「九州周辺における沿岸の海洋環境」

を開催します。日程、開催場所は次の通りです。話題提供者を募集しますので、講演希望者は募集要項に従って応募してください。

日時:1998年12月上旬または中旬(西日本海洋調査連絡会議の翌日)

場所:長崎海洋気象台

コンビーナー:松野 健(長崎大学水産学部)
         岡田良平(長崎海洋気象台)
         森永健司(西海区水産研究所)

話題提供:招待 4〜5題、一般 6〜7題

講演募集:以下の趣旨に添った講演を募集します。講演を希望される方は、7月31日
       までに下記に、題目、著者、内容がわかる程度の簡単な講演要旨(5,6行)
       をお送りください。後日、A4で2枚程度の講演要旨をお送りいただきます。

申込先:〒852-8521 長崎市文教町1−14
     長崎大学水産学部 松野 健
     e-mail: matsuno@net.nagasaki-u.ac.jp
     Fax: 095-844-3516

その他:e-mailがある場合にはメールアドレスをお知らせください。
     応募が多すぎる場合には、シンポジウムの趣旨に沿ったものから選ばせてい
     ただきます。結果については、8月中頃までにご連絡します。 

趣旨:
 沿岸域は人間の生活、なかでも経済活動を行う場所として重要な役割を果たしており,特に九州周辺の沿岸域は有史以降盛んに利用されてきた.しかし,近年に至って,いくつかの大規模工業団地の開発・整備や都市化の影響の増大に伴い,人間生活を豊かにするはずの沿岸域の開発利用が、人間に甚大な悪影響を及ぼす場合のあることを、水俣の例をひくまでもなく、我々は身を持って体験してきた。また,最近では、市民に身近な自然環境の破壊や環境ホルモンの拡散等が大きな社会問題となっている.このため,環境問題のみならず生活、経済の面で,沿岸域が人間にとってどのような意味を持つのかを改めて検討する必要に我々は迫られている。

 沿岸域では、これまで多種多様な調査研究が行われており、大学や官庁、各県の水産試験場などによる調査研究をはじめ、個々の開発行為に対しての環境影響アセスメントが行われている。しかし、現状では,各調査研究の内容と結果の詳細について,広く一般に公開されていないものも多い。現時点で、我々にできることは、沿岸域での複雑かつ多様な海洋現象の本質をより正確に把握する努力を続けること、そして、その現象を理解するために必要な知見と情報とを可能な限り共有することであろう。そこで、本シンポジウムでは,九州周辺各地の沿岸海洋環境の調査研究に関わる知見の交換を通して、社会とのつながりの中で、今後の沿岸海洋研究をどのように進めていくべきかについて議論したいと考えている。

 特に,九州周辺の沿岸域の海洋環境に関して、現在どのような問題があるのか、あるいは長期的な定期観測を通じて、どのような変遷が明らかになってきたのか、また人間が手を加えようとしたとき、その後の状況についてどの程度のことまで予測可能なのかなど、さまざまな観点からの話題が提供されることを期待している。



5.支部会員名簿について
 本ニュースレターは支部会員、西南地区に登録されている海洋学会会員および西日本海洋調査技術連絡会議会員機関へお送りしています。本号とともに支部会員名簿をお送りする予定でしたが、都合により延期します。次号に17号発行以降の会員異動とともにお送りしますことを、ご了承下さい。

 なお、本支部は西南地区(山口県、九州7県、沖縄県)の海洋学の進歩普及を図ることを目的として海洋学会内に発足した組織ですが、地区内に在住しない方でも、海洋学会員でない方でも入会できます。地区外へ転出される場合、あるいは海洋学会を退会される場合でも支部への加入を継続することが可能です。この際に支部参加を継続する旨を事務局へお知らせ戴ければ、ニュースをお送りします。今後の転勤等に際して、ご連絡くださいますようお願い申し上げます。



本ニュースレターに関するご意見や投稿したい情報等がありましたら、下記へお知ら
せ下さい。

       日本海洋学会西南支部事務局
          鹿児島大学水産学部環境情報科学講座内
          〒890 鹿児島市下荒田四丁目50−20
          電話:099-286-4101 Fax:099-286-4015
          e-mail: ichikawa@zero.fish.kagoshima-u.ac.jp
       日本海洋学会西南支部ホームページ
          http://kaimen3.esst.kyushu-u.ac.jp/swb.html