レンズ風車

◆ マルチロータレンズ風車(クラスタードレンズ風車)

ここ20年で世界の風力発電用風車のサイズは増加の一途をたどっています。1995年に最大のロータ径が50m だったのが、2005年には5MW の風車で124 m のロータ径に達しました。 最近では8MW風車で164mのロータ径に達するものが Vestas社によって開発されました。 強くて軽い複合素材、特にカーボンを使用したFRP技術などによりこれが実現されてきました。風車を大型化すれば単位電力を作り出すコストが下がるのがその理由です。

マルチロータレンズ風車(クラスタードレンズ風車)

マルチロータレンズ風車(クラスタードレンズ風車)

今後これ以上風車を大型化しそのブレードを長くしてゆくには実は更なる材料工学などの技術的課題が立ちはだかっています。しかしながら違う形で同じ定格出力を達成する試みもあります。その一つに、小さな風車を同一構造上(平面でない場合もあります)に並べてマルチロータ風車(クラスタード風車と呼ばれることもあります)を構成するというものがあります。

マルチロータレンズ風車(クラスタードレンズ風車)

このマルチロータのコンセプトは理論上、同じ定格風車を比べた場合これまでの大型単一風車より小さい質量で実現できる利点があります。またその他にもタワーなどにかかる繰り返し荷重が和らぐなど数々の利点があります。一方、たくさんの風車を支える構造体をどのように安く作るかというような課題もあります。

マルチロータレンズ風車(クラスタードレンズ風車)

私たちの研究室では、このマルチロータコンセプトに九州大学で開発されたレンズ風車を応用する試みを始めています。レンズ風車とは風車に集風体(ディフューザと呼ばれることもある)を有し風を増速させて効率を増加させる画期的な風車のシステムです。集風体の出口には風の流れに対して垂直に立ち上がる「つば」と呼ばれる部分があります。
その一環として私たち風工学分野ではレンズ風車を大型の境界層風洞内に複数並べてその効果を計測する実験を行っています。まずは2基のレンズ風車を隣合せて効果を実験することから始めました。マルチ構造を構成する単一レンズ風車の出力と比較することによって複数台の風車間の流体力学的な干渉の効果が分かるわけです。 この実験では風車間の隙間の距離、つばの高さなどを変化させて実験を行います。 3基の風車を一列に横に並べた場合、その総出力が一つの構成風車単体で得られる出力を3倍したものより10%も増加するパターンも発見しました。
2基の風車のサイドバイサイド
マルチロータレンズ風車(クラスタードレンズ風車)


3基の風車のサイドバイサイド
マルチロータレンズ風車(クラスタードレンズ風車)


風洞実験と並行して、数値計算(CFD)も行っています。このCFDでは差分法を用い直行格子を使用して起算が行われます。現在、いくつかのロータのモデルを使ってレンズ風車の出力が正しく計算されるか検証が進められています。風洞実験と比較して良好な結果が得られた後、詳細な複数風車間の複雑な流れの検証が行われます。

マルチロータレンズ風車(クラスタードレンズ風車)

CFD の例:2基の風車を並べた場合、ギャップが風車径の2.5%の幅(左)と 3基の風車の場合、ギャップが10%(右)。
通常の風車ではギャップ間隔を変えても出力の総和はあまり変わりません。レンズ風車の場合は風車間の干渉と渦形成といった複雑な要因で出力の総和が幾分大きくなる例があることが分かってきました。

マルチロータレンズ風車(クラスタードレンズ風車)

風洞実験の結果を受けて、野外での実証実験も始まりました。2014年の12月、九州大学筑紫キャンパスに1kW レンズ風車を3基並べた3kWマルチ風車が建設され、シングルの3kW風車との比較実験が始められています。2015年11月現在、データが蓄えられています。
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