地球温暖化と急激な経済発展が東アジア域の海洋・大気環境に及ぼす影響の解明

課題.3海洋力学研究室

課題3 観測・実験・数値モデルの手法を通して、海洋の鉛直混合過程の定量的な理解を進めると共に、その研究成果を少しでも精度よく現実の現象を再現できる計算手法の確立に結びつけることを目標として。

海洋レーダーを用いた対馬海峡内の表層流の観測。

HFレーダーによる対馬海峡表層海況モニタリング
Tsushima Strait Monitoring System (HF radar, since 2002)

対馬海峡は、日本海の入り口にあたり、この場所の流況を知ることは、日本海全体の海水の挙動を理解する上で非常に重要です。九州大学応用力学研究所・東アジア海洋大気環境研究センターでは、対馬海峡周辺に2機種7基の海洋レーダーを設置し、対馬海峡表層海流の監視を行っています。

システムの詳細については、こちらのHPをご参照ください。HPでは1時間毎と日平均の流況図(毎日更新)も公開しています。

連続観測可能という特長を生かし、2002年の運用開始以来、システム単独もしくは他の観測結果との組み合わせにより、数多くの成果が得られています。以下にはその一部を紹介します。

対馬海峡東方の渦生成と生物生産    Short-term Variations (Tsushima Eddy)

海洋レーダーの特長としては、広範囲の表層流速を連続的に取得できる点が上げられます。この点を生かし、観測データの解析から、これまで多くの研究者がその存在を指摘しながら、決して明瞭にとらえることができなかった対馬島影にあるとされる渦を、対馬海峡東水道で確認することに成功しました。

本研究では、渦の規模や強さを反映する渦指標を作成し、現象の定量的評価を試みました。
その結果、渦の多くは対馬南端の東方付近で出現し始め、徐々に大きくなりながら北東方向へ移流しており、対馬の島影にできる剥離渦であることをデータの上で示すことができました。

渦指標の時間変化から、渦の出現間隔として4-6日の周期が卓越し、この発生周期は平均流の作る渦の固有周期であることが推定されました。本研究の詳細は下記論文に記載されています。

中園隆司, 吉川裕, 増田章, 丸林賢次, 石橋道芳 (2008) 対馬海峡東水道に見られる反時計回り渦の変動特性, 九州大学応用力学研究所処方, Vol. 134, pp.47-52 (link)

この渦がただの物理現象に終わらないのは、渦の見られた数日後に、その周辺海域において、植物プランクトン濃度の増加事例が報告された点にあります。つまり渦があるとき、そこが好漁場になっている可能性が示唆されたことになります。詳細は下記論文をご参照ください。

Onitsuka, G., Morimoto, A., Takikawa, T., Watanabe, A., Moku, M., Yoshikawa, Y., and Yanagi, T. (2009) Enhanced chlorophyll associated with island-induced cyclonic eddies in the eastern channel of the Tsushima Straits. Estuar. Coast. Shelf Sci., Vol. 81, Issue 3, pp.401-408 (link).

対馬海峡表層海流の季節変動    Seasonal Variations

海洋レーダーの観測結果から、これまで知られていなかった対馬海峡西水道と東水道における表層海流の季節変動特性の違いが明らかになりました。

西水道(韓国側)では、流れの大きさが顕著な季節変動を示すのに対し、東水道(九州側)では、6-11月に渦が頻発し12-5月に見られないなど、流れの構造に関して顕著な季節変動が認められました。東水道にて12-5月に渦が見られないのは、ADCPを用いた観測の結果から、この期間は流れが順圧的になり、海底摩擦の影響が大きくなるためであると推定しています。

季節変動に関する成果は、その他の解析結果も含め、下記論文に記載されています。

Yoshikawa, Y., Masuda, A., Marubayashi, K., Ishibashi, M. (2010) Seasonal variations of the surface currents in the Tsushima Strait. J. Oceanogr., Vol. 66, Issue 2, pp.223-232 (link)

東シナ海・対馬海峡におけるエクマン境界層の観測。

東シナ海・対馬海峡のエクマン境界層    Turbulent Ekman Boundary Layers

ADCP流速計及びHFレーダーを用いて東シナ海と対馬海峡の海面及び海底付近の流れを測定した結果、理論的にはよく知られているものの、実際の観測例が少ないエクマン境界流が検出されました。背景にある物理過程についても考察を行っています。詳細は下記論文をご参照ください。

Yoshikawa, Y., Matsuno, T., Marubayashi, K., and Fukudome, K. (2007) A surface velocity spiral observed with ADCP and HF radar in the Tsushima Strait. J. Gephys. Res., 112, C06022, doi:10.1029/2006JC003625 (link).

Yoshikawa, Y., Endoh, T., Matsuno, T., Wagawa, T., Tsutsumi, E., Yoshimura, H., and Morii, Y (2010) Turbulent bottom Ekman boundary layer measured over a continental shelf. Geophys. Res. Lett., Vol. 37, L15605, doi:10.1029/2010GL044156 (link).

海上風や海面冷却がフロント域での沈み込み過程に与える影響の解明。

海洋鉛直混合過程    Frontal Subduction under Atmospheric Forcing

冬季における日本海表層水の深層への沈み込みは日本海の深層循環や周辺域の気候変動に大きく影響していると考えられているが、その力学機構についてはまだよくわかっていない。本研究では日本海中部を東西に横切る形で存在する亜寒帯フロントにおける鉛直循環に対する海上風ならびに海面冷却の役割について明らかにした。詳細は下記論文をご参照ください。

Thomas, L.N., Lee, C.M., Yoshikawa, Y. (2010) The Subpolar Front of the Japan/East Sea. Part II: Inverse Method for Determining the Frontal Vertical Circulation. J. Phys. Oceanogr., Vol. 40, Issue 1, pp.3-25. doi:10.1175/2009JPO4018.1 (link).

Yoshikawa, Y., Lee, C.M., Thomas, L.N. (2012) The Subpolar Front of the Japan/East Sea. Part III: Competing Roles of Frontal Dynamics and Atmospheric Forcing in Driving Ageostrophic Vertical Circulation and Subduction. J. Phys. Oceanogr., Vol. 42, Issue 6, pp.991-1011. doi:10.1175/JPO-D-11-0154.1 (link).

このページのトップへ