地球温暖化と急激な経済発展が東アジア域の海洋・大気環境に及ぼす影響の解明

課題.3海洋動態解析研究室

課題3 観測・実験・数値モデルの手法を通して、海洋の鉛直混合過程の定量的な理解を進めると共に、その研究成果を少しでも精度よく現実の現象を再現できる計算手法の確立に結びつけることを目標として。

東シナ海陸棚域における表層混合層と亜表層との間の物質輸送・混合過程の計測。

東シナ海陸棚域への栄養塩の供給と鉛直乱流拡散

東シナ海陸棚域では他の様々な海域と同様、亜表層クロロフィル極大層が頻繁に見られる。そこでの基礎生産が同海域の生物生産に大きな役割を果たしている可能性があるが、そこに供給される栄養塩の起源については、まだ十分な定量的な評価がなされていない。

東シナ海北部陸棚域における栄養塩の起源

  • 栄養塩の供給
    • 長江希釈水
      • 硝酸塩が豊富, 高 N/P 比, 沿岸側から供給
    • 黒潮亜表層水
      • リン酸塩が豊富, 低 N/P 比, 下層から供給
Redfield 比
植物プランクトンはある一定の割合で炭素、窒素、リンを取り込み、その比で有機物が構成されている、とされており、その比C:N:P = 106:16:1はRedfield比と呼ばれている。

陸棚域下層に分布する高栄養塩水が生物基礎生産に関わる過程について、表層混合層直下の鉛直混合過程を定量的に評価する。

研究の目的

  • 夏季の東シナ海陸棚域において、
    微細構造の直接計測を行い、鉛直拡散による栄養塩の鉛直輸送を見積る。 ※ 亜表層クロロフィル極大層に栄養塩を供給するいくつかの物理過程がある。

研究の結果

2011年7月16-17日に東シナ海陸棚域で観測された、上段左から濁度、蛍光光度、密度、浮力振動数、ε、鉛直拡散係数、下段左からクロロフィルa、硝酸態+亜硝酸態窒素、亜硝酸態窒素、リン酸態リン、透過度、PAR。

海底上30m程度の海底混合層が見られ、その直上にクロロフィル極大層が形成されていることがわかる。εは潮時による変動が見られ、潮汐流が大きいときに海底境界層内で大きな値になっている。栄養塩は海底境界層内で濃度が高くなっており、境界層直上のクロロフィル極大が、下層からの栄養塩の供給によって維持されていることが示唆される。また、海底境界層内の高濁度によって、境界層上部で光の強さが急激に弱くなっていることがわかる。またクロロフィル極大層付近のN/P比が比較的小さいことからも、栄養塩の供給が下層からであることが示唆される。

結論

  • 東シナ海陸棚域の基礎生産に大きく寄与していることが推察される亜表層クロロフィル極大層の生産に使われる栄養塩がどこから来ているかについて、微細構造を含む詳細な鉛直分布計測に基づいた見積りを行った。
  • 栄養塩の起源としては、一般によく想定される長江起源と、東シナ海への栄養塩の供給に大きな役割を果たしていると言われる黒潮亜表層水などを起源とした下層水が考えられ、両者がN/P比によって分けられることを示唆する結果が得られた。
  • 亜表層クロロフィル極大層付近における栄養塩のN/Pが大きいとき、下層からの鉛直拡散による栄養塩フラックスは小さく、逆にN/Pが16より小さいときには鉛直フラックスが大きいことが観測から明らかになった。
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