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九州大学応用力学研究所
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京都大学の山中教授が発明したiPS細胞は、様々な細胞に分化する能力をもつ万能細胞として知られています。最近では、iPS細胞を心筋細胞(心臓の細胞)に分化させる技術も確立し、比較的容易にヒト心筋細胞を研究に用いることができるようになりました。一方、心臓を形成する心筋組織では、ATPという形で蓄えられた化学エネルギーが、サルコメアという微小組織を動かす機械エネルギーへと変換し、さらには心臓の収縮運動というより大きな機械エネルギーへと変換されます。本研究では、iPS細胞由来心筋細胞と高分子系の人工材料を組み合わせることで自律的に拍動するバイオデバイスの開発研究に取り組んでいます。
2017年、ミシガン大学のSchroederらが電気うなぎの発電細胞における発電メカニズムを模擬したハイドロゲル電池の基本的概念が公表しました(Schroeder TBH, et al., Nature 2017)。本研究では、この発電メカニズムを利用したハイドロゲル電池の高性能化と工学的応用を目的として研究を進めています。Schroederらは電解質として塩化ナトリウムを用いましたが、我々の研究室では、より高い起電力を発現する電解質を見出すことに成功しました。
超高齢社会を迎えた日本では、高齢者の骨粗鬆症が社会的問題となっています。骨粗鬆症が進行すると骨構造が脆弱化し、容易に骨折が生じるようになります。治癒能力が低下した高齢者では、骨折により寝たきりになってしまうことも少なくありません。また、変形性関節症により膝関節や股関節が変形し軟骨がすり減ってしまうと、最終的には人工関節置換術が唯一の治療法になってしまいますが、人工関節を装着することで関節の力学的環境が大きく変化し、例えばストレス・シールディングによる骨量の低下や、人工関節周囲での骨折等を引きおこすことがあります。本研究では、整形外科の臨床医と共同で、臨床用CT画像を利用した3次元骨・関節モデルの数値モデル構築法、ならびに有限要素法と損傷力学を組み合わせた骨折解析法を様々な臨床問題に適用し、研究を進めています。
損傷を受けた臓器や組織を人工物で置き換えるのではなく、できるだけオリジナルに近い状態での臓器や組織で置き換える医学的手法を再生医療と呼んでおり、近年、新しい医学として注目を集めています。再生医療の技術基盤が組織工学であり、医学と工学を結ぶ境界領域の学問として研究が進められています。細胞から人工的に組織を作り出す技術の開発は、組織工学の中でも最も重要な分野であり、たとえば、細胞とバイオセラミックス、バイオポリマー、あるいはそれらの複合材料とを組み合わせた組織構築法について研究が進められています。本研究では、生体吸収性ポリマーや生体ポリマーを用いた血管再生用円筒形構造体や、ハイドロキシアパタイト等のリン酸カルシウム系バイオセラミックスと生体適合性ポリマーを複合化した骨再生用の多孔質複合構造体の開発に取り組んでいます。