研究概要

研究背景・目的

人為起源のCO2などの長寿命温室効果気体が深刻な気候変動をもたらすことが明らかとなり、国際的にはパリ協定の下での様々な動向、国内では気候変動適応法の施行など、本格的な行動が具体化しています。一方、長寿命温室効果気体と同様に、大気・海洋・陸面のエネルギー収支に影響をもたらして気候変動を引き起こすエアロゾル・メタン・オゾンなどの短寿命気候強制因子 (short-lived climate forcers (SLCFs)) については、その影響に対する緩和へ向けた動きが活発とはいえません。パリ協定の目標と現状の各国の気候変動緩和目標との間には大きな隔たりがあり、長寿命温室効果気体の削減だけでは緩和策が行き詰まる可能性が高くなっています。したがって、排出量制御の効果が短期間で現れるSLCFsによる気候変動および環境影響を明らかにし、それらを緩和するための最適シナリオに関する科学的知見の蓄積が不可欠です。

このプロジェクトでは、環境研究総合推進費S-7「東アジアにおける広域大気汚染の解明と温暖化対策との共便益を考慮した大気環境管理の推進に関する総合的研究」および環境研究総合推進費S-12「SLCPの環境影響評価と削減パスの探索による気候変動対策の推進」(提言書:日本語版英語版)にて構築してきた研究成果を発展させ、排出源および大気中の時空間分布が偏在しているSLCFsの地域ごと及び組成ごとの気候変動・環境影響を定量的に評価し、同時に影響緩和へ向けた排出量削減シナリオを策定するための研究を推進します。その研究成果であるSLCFsの最適削減に関する科学的知見を国内外の環境政策のために提供することを目指します。

研究テーマ

テーマ1:短寿命気候強制因子による地域規模の気候変動評価

  • サブテーマ1:エアロゾルによる気候変動の定量的評価
  • サブテーマ2:短寿命微量気体による気候変動の定量的評価
  • サブテーマ3:高分解能気候モデルを用いた短寿命気候強制因子による気候変動の定量的評価
  • サブテーマ4:短寿命気候強制因子による大気水循環変動の定量的評価

テーマ2:短寿命気候強制因子による地域規模の環境影響評価

  • サブテーマ1:短寿命気候強制因子による陸水変動の定量的評価
  • サブテーマ2:短寿命気候強制因子による健康影響の定量的評価
  • サブテーマ3:短寿命気候強制因子による農作物影響の定量的評価
  • サブテーマ4:地域スケールでの影響評価のための気象データダウンスケーリング

テーマ3:短寿命気候強制因子による環境影響の緩和シナリオの定量化

  • サブテーマ1:統合評価モデルを用いた短寿命気候強制因子の緩和シナリオの定量的評価
  • サブテーマ2:アジア域における短寿命気候強制因子緩和策の技術的潜在性の定量的評価
  • サブテーマ3:アジア域における短寿命気候強制因子の排出インベントリの精緻化
  • サブテーマ4:アジア域における短寿命気候強制因子に関わる緩和策の評価